安倍自民圧勝と冬の時代の到来 / 山本太郎当選の意義:オールタナティブ運動の核となれ

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[参院選:立法府の9割を新自由主義勢力が占める結果に / 窮地に陥ったTPP反対運動]

参院選が終わった。マスコミの事前の予想とほぼたがわず、自民の単独過半数はならなかったものの、自公で単独過半数を達成し、衆参のねじれが解消された。自公が圧勝した昨年末の衆院選、先の都議会選挙と、安倍自民への追い風がずっと続いている状態である。維新・みんなも公示前勢力を上回った。自民や民主の中にTPP反対派がいるとされるが、安倍政権は今回の選挙で事実上信任された形となった。いよいよ夏本番だが、日本には冬の時代が訪れようとしている。

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TPP反対の民意を投票結果に反映させることができなかったばかりか、却って新自由主義グローバリズム勢力を伸長させることとなった。私も含め、ネット言論の非力さを痛感する。そしてこれは既に当ブログ記事「TPP反対運動が失敗する理由」にて述べたことだが、TPP反対運動を統一できずに、党派・団体別にバラバラで行っている現在のTPP反対運動の生ぬるさを認識せざるをえない。党派団体の壁を越えられなかった「不作為の作為」の招いた結果であると言えるだろう。今後の見通しは暗いものと言わざるを得ない。

第一次安倍内閣が短命に終わったのは2007年の参院選で大敗したことが大きな原因である。今回の参院選で大勝し衆参のねじれを解消したことで、安倍政権は長期政権となることが予想される。何らかの事情で衆議院が解散されない限り、今後3年は選挙がない。選挙でTPPの賛否を国民が判断する機会がもはや失われたといって等しい。

TPP反対派は国政選挙においてその民意を票に反映させ形にすることに失敗し続けている。昨年末の衆院選ではまだ「騙された」という言い訳もできたが、安倍政権がTPP推進に邁進しているさなかに行われた今回の参院選ではそうした言い訳はもはやできないことは明白であった。推進派の思う壺である。

今回の選挙においても自民から比例区候補者で唯一TPP反対のJA出身の山田俊男は前回の45万票よりは大幅に得票を減らしたものの、33万8千票を集め、同党2位で余裕の当選を果たした。選挙前に既にこの問題を指摘したが、その集票力によって同党から出馬した他の推進派候補の当選に寄与したことになる。例えば、推進派であるワタミの渡辺美樹は10万票、最下位当選の太田房江は7万7千票だけで当選した。この意味は、緑の党から立候補した三宅洋平が、ほぼ渡辺美樹と太田の票をあわせた票数である約17万7千票を獲得したが、党への基礎票が少なく落選したという事例からもよくわかることである。

多数の推進派候補が当選した一方、民主党時代からTPP反対運動に多大な貢献をしてきた山田正彦元農水相(みどりの風・比例)がわずか4万4千票しか得られず落選したということも、TPP反対派が今回の選挙でなんら有効な対策を打ち出せていなかったということを示唆している。
(私は今回山田正彦元農水相への投票を呼びかけ、ツイッターやブログを見てくださった方から山田氏へ投票したという声も寄せて頂いた。当ブログ推奨投票先に投票して下さった方々にこの場を借りて感謝申し上げる。)

TPPを推進する自民・公明・維新・みんな・民主という新自由主義勢力をあわせると、参議院の91%をも占める状態となった。衆議院ではこれらの政党で衆議院の93.5%を占めている。TPP交渉がもし妥結し、批准に持ち込まれる事態となれば、否決はほぼ不可能となったと言える。安倍政権にお墨付きが与えられたことでTPP反対派は益々窮地に追い込まれる形となった。このような状態でTPPを潰すためには、海外の団体と協力してTPP交渉そのものを潰しにかかることと同時に、秘密交渉であるところのTPPの情報をできるかぎり収集し、安倍政権・自民党の掲げた政策や衆参農水委員会での決議との矛盾を突き、抗議運動を拡大していくほかない。

日本は今回マレーシアで行われているTPP交渉に日程の途中である7月23日午後、「鶴岡公二首席交渉官が交渉の前提となる守秘契約に署名し日本が12か国目の交渉参加国となった」(読売新聞、7月23日)。

前回の記事でもお伝えしたように、今回の交渉では最重要の関税に関する協議は日本が参加する前にすでに終了しており、日本が参加するのは「交渉」なのではなく、実際は日本への「説明会」なのである。日本ができるのは23日午後に開示された情報を大急ぎで翻訳して情報収集し、24日25日に参加国から説明を受けるだけなのだ。マスコミはこの重大点に関して報道せず、あたかも日本がすぐさま各国との交渉に参加するかのような印象を与える報道に終始している。

日本は既に決まった内容に関して蒸し返して再交渉をすることは認められていない。内容も事前に開示されぬものに対して、これまでに決まったことを全て受け入れるという約束をして交渉に参加するというのだから、愚の骨頂である。しかも妥結すれば内容は4年間非公開とされる。その一方で、一握りの選ばれた大企業の代表は事前に内容を知らされているのである。この交渉の性質自体が、TPPが99%のためのものではなく、1%のためのものであることを強く示唆していると言えよう。

[戦争のできる国へ /武器輸出三原則撤廃・集団的自衛権容認・憲法改正]

安倍首相は参院選の勝利を受けて、選挙戦の間は明確に訴えていなかったきな臭い政策を次々と発表した。選挙翌日の22日、安倍は武器輸出三原則の撤廃の指針を表明(共同通信、7月23日)、また現在の憲法の政府解釈で禁じられている集団的自衛権の行使をできるように解釈を変更する方針も示した(東京新聞、7月23日)。

また共同通信による今回の参院選当選者と非改選の議員をあわせた全参議院議員へのアンケート調査で、全体の72%にあたる196人が憲法改正に賛成という結果が発表された(共同通信、7月22日)。

多くの国民が危機感すら感じない状態のまま、日本は新自由主義コーポレートファシズムと呼ぶべき方向へと急激に、着実に向かっている。TPPが一握りの多国籍資本が国家の上位に位置して、国家と国民を食い物にするのと同様に、軍需産業がその儲けのために国家に戦争をさせ、それを「愛国」の名の下に国民に強いるということが行われるといったことになりかねない。「戦争は公共事業」に「兵役は貧者救済」に、そんなグロテスクな未来図が見えてくる。この国は一体だれのものなのか。

関連記事『日本が「死の商人」に-安倍政権、武器輸出三原則撤廃を目指す』(志葉玲)

[中道左派の壊滅と共産党の伸張]

今回の選挙でも先の衆院選や都議会選挙の流れがそのままで、自公が圧勝し、みんな・維新が漸進し、共産党も伸張する一方で、民主が大敗し、中道左派が壊滅状態に追い込まれた。中道左派勢力は先の衆院選で弱体化し、候補も十分たてられず、選挙協力も不十分で、またその政策も十分有権者に伝わっていなかったことが想像される。有権者は中道左派にも民主と同じ罪を着せたのであろう。比例で社民が1議席を取るのがやっとで、生活の党もみどりの風も候補者全員が落選の憂き目にあった。社民党は1議席獲得で非改選をあわせて3議席、生活の党は獲得議席ゼロで非改選の2議席のみとなった。そしてみどりの風は議席そのものがゼロとなり、参議院から消滅、谷岡郁子は代表を辞任した。みどりの風は衆議院に亀井静香・阿部知子の2名を残すのみで、政党要件を失い、党の存続自体が難しい情勢となっている。

一方、全国組織を維持し、資金力もある共産党は都議会選挙で勢いをつけ、東京・京都・大阪というかつて共産党が知事を輩出したことのある定員が複数の選挙区で当選者を出し、比例でも5人当選し、計8人が当選した。中道への期待が民主党政権の失敗によって、自民・みんな・維新へと流れた多くの票と、共産党に流れた少数の票とに分かれた格好である。

民主の大敗は想定内のことであるが、日本の民主主義にとって中道左派が壊滅することはとてつもなく大きい意味を持つ。私が推奨していた舟山康江(みどり・山形)・森ゆうこ(生活・新潟)は激戦の末敗れ、山田正彦(みどり・比例)・亀井亜紀子(みどり・島根)・三宅雪子(生活・比例)といった筋金入りのTPP反対派候補も敗れることとなった。

今回の参院選の前に山本太郎が「このままだと根絶やしにされる」と警鐘を鳴らし、これら中道左派や共産党に統一戦線を組むことを提唱したのであるが、各党はそれぞれの事情や思惑(そして個人的な人間関係もあるだろう)によって共闘を拒否した。生活・みどり・社民の3党は選挙協力をしたが、それは部分的なものにすぎない。一番の失敗例は社民党が候補を立てて現職・森ゆうこ(生活)の足を引っ張った新潟選挙区で、結果、森も社民候補も共倒れとなった。

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この表は今回の参院選比例区の得票と獲得議席数である。生活・社民・みどり・大地・緑の党の5党からの当選は社民の1議席だけであるが、すぐ右の表に示したように、これらの党の票をあわせたら、3議席は獲得できていた計算になる(その場合、1議席目は三宅洋平に、2・3議席目は社民党候補に回る形になる)。もし共闘が実現していたなら、相乗効果も出て、それ以上の議席を獲得できた可能性もある。中道左派は勢力が弱体化してもなお共闘すら実現できなかった結果、山本太郎が選挙前に危惧した通り、文字通り「根絶やし」にされてしまった。

選挙戦のさなかから選挙が終わってもなお、山本太郎への執拗なネガティブキャンペーンが展開されているのだが、選挙後生活の党支持者の一部からも山本太郎への批判が再び噴出しているようだ。これらの批判者たちは昨年末の衆院選のあと、未来の党が失敗したのは山本太郎に引きずられたのが原因(これに対する私の反論は既に過去記事で述べた)だとして、純化路線で参院選に挑むことを主張していた。そして今回の参院選では、党が勝手連的に山本太郎を支援するということのみに留め、山本太郎の提唱した統一戦線については拒否し、これら山本批判者たちの主張する通り各党が純化路線で参院選に挑み、結果敗れたのでる。

ここに至って、組織的背景を持たず、ボランティアのスタッフに支えられ、草の根運動的に東京の有権者の間に支持が広がって当選を果たした山本太郎を、この期に及んで批判するのは筋違いではなかろうか。しかも山本太郎の出馬した東京選挙区では生活の党は候補者を擁立しておらず、なんら敵対するような関係にはなかったにもかかわらずである。こうした批判は如何にその批判を尤もらしく理論づけようとも、選挙直後という時期が時期だけに、第三者が見るとそれは山本太郎への嫉妬と勘繰られる恐れもある。他者を批判するよりも、何故に自党の訴えが有権者を動かせなかったのかを見つめなおすことが、今後の立て直しに必須なのではないだろうか。今後TPP・消費税増税・原発再稼働・憲法改正といった重要課題が目白押しの状況で、敵を見誤るべきではない。

生活の党には国会で働いて頂きたい人材が豊富なのだが、このように周りでゴタゴタが続いていて、残念ながらどうにもならない様相を呈してきていると思う。衆院選の未来の党の失敗のあと、一部の支持者が不正選挙騒ぎを起こし、そして選挙期間中に某陰謀論者一派が党の候補に接近し食い込むという騒動があり、参院選が終わってみれば、支持者はなぜか山本太郎支持派と批判派に分かれてしまった。党とは直接関係のない話で更に分断を深めているのである。弱り目に祟り目である。残念ながら当分の間は党勢を立て直すのは難しいだろうと思う。下手をすると、今後橋下維新やみんなの党が仕掛けてくるであろう民主を巻き込んだ政界再編に飲み込まれてしまう可能性すらある。

逆に山本太郎は、頼まれもしないのであれば、山本の側から生活の党にアプローチをかける必要はなく、当分近づかない方がむしろ身の為である。再度野党共闘の話が出るのだとしたら、その時は中道左派政党の側が山本太郎に頭を下げてお願いするのが筋ではなかろうか。これらの政党は2度にわたり山本の統一戦線の提唱を蹴ったのだから。

[山本太郎が当選したことの意味: 「もう一人じゃない」。しかし「いまだに一人」]

さて今回の参院選は安倍自民を是認する風が強い中での選挙、つまり当ブログの主張からは大逆風の吹きすさぶ中での選挙であったが、全体としてみれば悲惨な結果となった。私が強く推奨した候補の中で唯一当選を果たしたのが山本太郎である。私たちのために立ち上がってくれたその勇気とあわせ、心から祝福をさせていただきたい。また山本太郎を支えたスタッフの皆様、山本に票を投じた有権者の方々に感謝の意を表する。

山本太郎の当選が意味するものは、上記のように日本の民主主義がどんどんとデッドロックに陥り、多くの人が共産党に投票するほどまでに、もはや希望の芽が見いだせないものとなりつつある中で、山本太郎という存在が、政治と言うものを従来とは全く異なる新たな視点で捉え直し、ひょっとしたらどこかの地点でひっくり返す起爆剤になるのではないかと予感させるものがあったという点だと思っている。少なくとも私は山本太郎が昨年の衆院選に出馬するときの模様を見てそう思った。

山本太郎は多くの人のバックアップで当選した。その意味で「もはや一人ではない」。しかし、山本太郎が当初声を掛けたところの、国会で組むべき中道左派の候補が壊滅状態となってしまい、その点で「いまだに一人」と言える状態だ。中道左派の壊滅は本当に痛手である。これまで山本太郎には選挙で戦うための参謀が必要であったのだが、ここからは政治全体を見渡すことのできる目の効くいい参謀が必要になる。また実務に通じた経験豊かな秘書も必要になるだろう。

山本が組むべき中道左派がほぼ壊滅状態となってしまったことで、山本は野党連合を作るといった当初の構想は当面は考えず、田中康夫がやっていたように他党の政治家と連携しつつも機動力を生かして、一人でできること、おもしろいことをどんどんやっていったらいいと思う。

記事下で紹介する動画で山本を激励している作曲家のなかにし礼が奇しくも同じことを言っているのであるが、山本太郎の賞味期限は、山本がどこかの勢力に抱き込まれ、他の党が抱える類の単なるタレント政治家のような、毒にも薬にもならぬこじんまりとまとまった存在と化した瞬間に切れると思う。恐らく聡明な山本本人も重々承知していることと思う。

私が山本太郎にぜひやっていただきたいと思うのが、これまでやってきたように草の根レベルの活動を続け(つまり雲の上の人とならず)、ネット配信を充実させるとともに、言いたい放題のネット討論番組を企画して流していただきたいということである。テレビ新聞で名を馳せたような人たちではなく、三宅洋平やフリージャーナリストや政治ブロガーや無名の研究者や他党の政治家たちを招き、議論をし、質問を受け付け、一般支持者も議論に加わるというものを、定期的にやっていただければと願う。

そしてもう一つ山本太郎にぜひやっていただきたいのが、以前にも同じことを書いたのだが、亀井静香に個人的に弟子入りすることである。周囲に異論もあるかも知れないが、これだけはどうしてもやっていただきたい。江川紹子が山本太郎に小沢一郎か共産党への弟子入りを勧めているのだが、それは山本太郎には似つかわしくない。山本太郎をスケールの小さいものへと変化させ、賞味期限切れを早めてしまうことになりかねない。

また上に述べたように、山本太郎自身は小沢一郎に迷惑をかけたつもりはないはずであるが、小沢一郎の支持者の一部から山本は反感を持たれている。共産党にしても、一部の支持者が熱心に山本太郎へのネガキャンを選挙戦中に行っていた。そうしたことを鑑みれば、どちらも山本が選択すべきものではないのは明白だ。

恐らく山本太郎が最もウマが合い、かつ学ぶところの多い政治家が亀井静香だと私は思う。山本は参院選も亀井の盟友・山田正彦と共闘して戦ったこともあり、山本が亀井の門を叩くのは至極自然である。冬の時代を耐えるため、人々を勇気づけるために、ぜひとも亀井静香X山本太郎のコラボレーションを見せて頂きたい。そしていつまでも賞味期限の切れない政治家になって頂きたいと願う。

山本太郎の支持者の皆様におかれても、この状況では山本がたった一人で国会で活動せざるを得ず、掲げた政策の実現は早期にはほぼ不可能であることを念頭においた上で、叱咤激励しつつ粘り強く支援していっていただきたいと願う。ふわっとした民意ではなく、それを形のあるものにしていくことが山本太郎にはできると私は思う。有権者にも忍耐強さが求められる。山本太郎一人を屋根の上に上げて、梯子を外すまねをしてはいけない。山本太郎を皆で守り、育てる心意気で支えよう。

下の動画は山本太郎が当選を果たした翌日の7月22日にテレビ朝日の番組に出演したときの模様である(*動画は削除される恐れがありますので早めにご覧ください)。私はこの動画で山本太郎を激励しているなかにし礼の言葉に全く同感である。孤軍奮闘を続け、そのことで輪を広げていっていただきたい。
そして、当ブログで以前ご紹介したイタリアの喜劇役者ベッペ・グリッロの如く、オールタナティブ運動の核となっていっていただきたい。

*記事が長くなってしまったので、ここで書きたかった日本の民主主義のインチキのカラクリについては次回に書きたい。極めて重要な内容なのでぜひ次回もお読みいただければ幸いである。山本太郎さんにも是非お読みいただきたい内容である。

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